「渋川ラーメン」で検索してこのページにたどり着いたあなた。正直に言います——公式なご当地ラーメンとしての「渋川ラーメン」は、存在しません。

えっ、じゃあこの記事は何なの？　そう思われたかもしれません。でも、ちょっと待ってください。渋川市には、公式ブランドがないからこそ見逃されてきた「知る人ぞ知るラーメン文化」が息づいているんです。

青竹で打つ手もみ麺、温泉街の〆ラーメン、朝9時から営業する驚異の550円ラーメン……。水沢うどんの陰に隠れた、もうひとつの麺文化をご紹介します。

ネット上で話題！渋川のラーメン体験談まとめ

「伊香保に来たら水沢うどんでしょ」——そんな固定観念を覆す声が、じわじわと広がっています。SNSやグルメサイトで見つけた、リアルな体験談をまとめてみました。

多くの人が「予想外の発見」と評価しているのが印象的ですね。「水沢うどんを食べに来たのにラーメンにハマった」という声も少なくありません。渋川のラーメンは、期待していなかったからこそ感動が大きい——そんな隠れた名物になりつつあるようです。

なぜ渋川には「公式ご当地ラーメン」がないのか？——歴史と文化背景

群馬県は全国4位の小麦産地。「粉食文化」が根づいた土地柄です。ところが、その文化の中心はあくまでうどんでした。

渋川市伊香保町の水沢うどんは、日本三大うどんのひとつ。飛鳥時代に創建された水澤寺の門前で参拝客にふるまわれたのが起源とされ、1300年以上の歴史を誇ります。「水沢うどん街道」には13店舗以上が軒を連ね、観光客の胃袋をがっちり掴んできたわけです。

ラーメンが入り込む余地なんて、なかったんですね。

でも、だからこそ面白い現象が起きています。公式ブランドの縛りがないぶん、各店が自由に「自分たちの一杯」を追求してきた。青竹手打ちにこだわる店、昭和の味を守り続ける老舗、朝ラー文化を持ち込んだ新興店……。統一感がないからこそ、多様性が生まれたのかもしれません。

💡 ポイント：藤岡市には「上州藤岡ラーメン会」という店主の団体があり、鶏ガラベースの醤油味・中太縮れ麺という統一定義が存在します。渋川にはそうした組織がないため、各店が独自路線を歩んでいます。

渋川ラーメンの三大スタイル——統一定義がないからこそ多彩

公式定義がない渋川のラーメン。でも、現地を歩くと大きく3つのスタイルに分類できることがわかります。当店で通販用ラーメンを開発する際にも、この3スタイルを参考にしました。

【スタイル1】青竹手打ち系——「わたりや」に代表される職人技

渋川ラーメンを語るなら、まずこれ。青竹踏みで打つ自家製麺です。

太めの縮れ麺は、表面がざらついていてスープをよく絡めます。噛むともちっとした弾力があって、小麦の風味がふわっと広がる。機械製麺では絶対に出せない、不揃いな太さがまたいいんですよね。口の中で食感がランダムに変わるから、最後まで飽きません。

スープは鶏ガラベースのあっさり醤油が定番。澄んだ琥珀色で、見た目にも優しい印象を与えます。脂っこさがないので、温泉上がりでもするする入るのが嬉しいところ。

【スタイル2】昭和レトロ系——「伊勢屋」に代表される懐かしの味

大正14年創業。もともと和菓子店だった「伊勢屋」の中華そばは、昭和の食堂文化そのものです。

特徴は、表面に張った油膜。これが冷めにくさの秘密であり、熱々のままレンゲですくえる喜びがあります。具はチャーシュー、メンマ、ナルト、ネギというシンプルな構成。奇をてらわない直球勝負が、逆に新鮮に感じられます。

そして驚くべきは、手巻き寿司やみたらし団子との組み合わせ。「中華そばとおいなりさんとみたらし」というセットを頼む常連客が多いそうで、これぞ昭和の食文化の名残り。ラーメン単品で完結させないスタイルが、なんとも粋じゃないですか。

【スタイル3】淡麗系——「麺処いち林」に代表される現代派

渋川・伊香保エリアで10年以上トップを走り続けている実力店。清湯系の淡麗ラーメン専門で、無化調にこだわっています。

鶏ベースに節などの魚介を効かせた醤油スープは、一口目から「あ、丁寧に作ってる」とわかる味わい。雑味がなく、最後の一滴まで飲み干せます。麺は中細ストレートと手もみから選択可能。その日の気分で変えられるのも嬉しいポイントですね。

行列必至の人気店なので、平日の開店直後を狙うのがおすすめ。週末は覚悟して並びましょう。

地元で愛される名店ガイド——渋川ラーメンを食べるならここ

伊香保温泉への家族旅行、同僚との慰安旅行、ゴルフ帰りの腹ごしらえ……。どんなシーンでも「ここなら間違いない」という4店舗を厳選しました。

🥇 麺処 いち林——エリア人気No.1の実力派

渋川で一軒だけ行くなら、ここ。異論は認めません。

10年以上にわたってエリア評価トップを維持しているのは、伊達じゃない。鶏と魚介の旨みが溶け合った醤油スープは、飲んだ瞬間に「あぁ、美味しい」と声が漏れます。派手さはないけれど、一口ごとに「また来よう」という気持ちが積み重なっていく。そんなラーメンです。

🥈 わたりや——山の中の「秘境ラーメン」

カーナビを信じて山道を進んでいくと、「本当にこんなところにラーメン屋があるの？」と不安になります。大丈夫。あります。

「秘境ラーメン」の異名をとる、知る人ぞ知る名店。最大の売りは青竹踏み手打ちの自家製麺。店主が毎日丹精込めて打つ太縮れ麺は、噛むたびに小麦の香りが広がります。自家製の支那竹（メンマ）と炭火焼きチャーシューも絶品。

食後にはコーヒーかジュースのサービスがあるのも、この店ならでは。山奥まで来てくれた客への感謝の気持ちが伝わってきて、なんだかほっこりします。

🥉 にぼしラーメン かのうや——驚異の550円＆朝ラー対応

「昭和ラーメン」が550円。この価格設定、正気ですか？

朝9時から営業しているので、「朝ラー」も可能。前橋の製麺所、北橘の豚肉、榛東村の玉子と、地産地消にこだわった食材を使いながらこの価格。チャーシューは「本物の焼豚」を注文ごとにスライスしているというから驚きです。

コスパ重視の方、家族連れでお財布に優しく済ませたい方には、まさにうってつけ。4人家族でラーメンを食べても2,200円ですからね。外食とは思えない安さです。

🏆 伊勢屋——大正14年創業の老舗

1925年創業。もうすぐ100年。和菓子店から始まり、いつの間にか「中華そばと団子の店」になっていた——そんな不思議な歴史を持つ老舗です。

油膜が張った熱々のスープ、昔ながらの具材、そして隣に並ぶみたらし団子やいなり寿司。令和の時代に、昭和の食堂文化がそのまま残っています。「中華そばとおいなりさんとみたらし」を頼んで、タイムスリップした気分を味わってみてください。