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なぜ大船渡さんまラーメンが特別なのか

本州一のサンマ水揚げ量を誇る岩手県大船渡市。ここで生まれた「大船渡さんまラーメン」は、単なるご当地グルメではありません。東日本大震災を乗り越えて復活を遂げた、地域の誇りと希望が詰まった一杯です。
2010年に誕生したこのラーメンの最大の特徴は、各店舗がそれぞれ独自の工夫を凝らし、全く異なる味わいを提供していること。サンマの出汁を活かしたスープ、丸ごと一匹乗せた豪快な盛り付け、自家製サンマオイルの香り豊かな一杯など、店舗ごとに異なる個性が楽しめます。
震災を乗り越えた奇跡の復活物語
誕生から震災、そして復活へ

大船渡さんまラーメンの歴史は、2010年12月20日に始まりました。碁石海岸レストハウスのオーナー・小川氏を発起人として、市内10店舗が参加してスタートしたこのプロジェクトは、大船渡の新たな観光資源として期待を集めていました。
しかし、わずか3か月後の2011年3月11日、東日本大震災が発生。参加店舗の多くが被災し、プロジェクトの続行が危ぶまれました。それでも、地域の復興への思いと、全国からの支援に支えられ、さんまラーメンは見事に復活を遂げました。
全国への広がり

2013年には、大船渡市内の「黒船」の名前を冠したカップ麺が明星食品から全国発売され、復興支援の輪が広がりました。現在では、市内7軒の店舗で提供され、東京ラーメンショーにも出店するなど、その知名度は全国区となっています。
さんまラーメンの基本的な特徴を徹底解説

スープの多様性
大船渡さんまラーメンの最大の魅力は、店舗ごとに異なるスープの個性です:
秋刀魚節出汁タイプ
- 秋刀魚を燻して乾燥させた「秋刀魚節」から取る出汁
- 魚臭さが少なく、上品な旨味と香ばしさが特徴
- 琥珀色の美しいスープに仕上がる
秋刀魚×地鶏ダブルスープタイプ
- 岩手県産南部どりと秋刀魚節を組み合わせた黄金スープ
- コクと旨味のバランスが絶妙
- 後味がすっきりとして飲み干せる一杯
秋刀魚オイル風味タイプ
- 自家製の秋刀魚オイルで香りづけ
- スープに浮かぶオイルが食欲をそそる
- 醤油や塩ベースのスープに深みを加える
麺の特徴

多くの店舗が岩手県産小麦を使用した自家製麺を採用:
- 細麺から平打ち麺まで、スープに合わせて選択
- 小麦の香りが豊かで、のど越しが良い
- スープとの相性を考えた加水率の調整
特徴的なトッピング

丸ごと一匹タイプ
- 焼いた秋刀魚を豪快に一匹乗せる
- みりん干しや塩焼きなど、調理法も店舗により異なる
- 見た目のインパクトと食べ応えが魅力
すり身だんごタイプ
- 秋刀魚のすり身を団子状にして提供
- つみれのような食感で、スープに旨味が溶け出す
その他の定番トッピング
- チャーシュー、メンマ、ネギなどの基本具材
- ベビーホタテなど、三陸の海の幸を追加する店舗も
地元民が教える!本当の楽しみ方

おすすめの食べ方
- まずはスープを一口
- 秋刀魚の風味を確かめる
- 各店舗の個性を感じ取る
- 秋刀魚をほぐしながら食べる
- 丸ごと乗っている場合は、少しずつほぐして麺と一緒に
- 味の変化を楽しむ
- 途中で味変を楽しむ
- 卓上の調味料で自分好みにアレンジ
- レモンを絞ると爽やかさがプラス
食べ歩きのコツ
発起人の小川氏がこだわったのは「1杯食べたらおしまいではなく、食べ歩く楽しみまで提供すること」。各店舗の味が全く異なるため、複数店舗の食べ比べがおすすめです。
絶対に外せない!有名店舗の詳細紹介
秋刀魚だし 黒船(本店)

岩手ラーメン総選挙でも優勝経験を持つ、大船渡さんまラーメンの代表格。秋刀魚節と南部どりから作る黄金スープは、一度食べたら忘れられない味わいです。
店舗情報
- 住所:岩手県大船渡市猪川町字藤沢口39-1
- 電話番号:0192-26-0144
- 営業時間:11:00-15:00(L.O. 15:00)、17:00-21:00(L.O. 20:45)
- 定休日:なし(夜営業は臨時休業あり)
特徴
- 秋刀魚節と南部どりのダブルスープ
- 歯切れの良い細めのストレート麺
- 醤油と塩の2種類から選択可能
- 東京ラーメンショーにも出店した実力派
碁石海岸レストハウス

さんまラーメンプロジェクトの発起人・小川氏が営むレストラン。観光名所・碁石海岸に位置し、絶景を楽しみながら食事ができます。
店舗情報
- 住所:岩手県大船渡市末崎町字大浜221-68 2F
- 電話番号:0192-29-2121
- 営業時間:11:00-14:00(平日)
- 定休日:不定休
特徴
- サンマのみりん干しを丸ごと一匹トッピング
- ほぐしながら食べることで味の変化を楽しめる
- 200席の広々とした店内で団体利用も可能
- 1階では大船渡の土産品も購入可能
貝だしラーメン黒船SECOND

黒船の2号店として、キャッセン大船渡内にオープン。秋刀魚だけでなく、あさりやしじみなど貝類の出汁を使った新しいスタイルのラーメンも提供。
店舗情報
- 住所:岩手県大船渡市大船渡町字野々田10-3(キャッセン大船渡内)
- 電話番号:0192-47-5665
- 営業時間:11:00-14:45
- 定休日:日・月・祝日
特徴
- 貝と地鶏の出汁を黄金比率でブレンド
- 平打ちの自家製麺を使用
- ベビーホタテなど海の幸をトッピング
- モダンでおしゃれな店内

自宅でも楽しめる!本格さんまラーメンのレシピ
基本の秋刀魚出汁の取り方
材料(4人分)
- 秋刀魚節(炙り秋刀魚):50g
- 水:2リットル
- 昆布:10cm角1枚
- 鶏ガラ:500g(下処理済み)
作り方
- 水に昆布を入れて30分以上浸す
- 鶏ガラを加えて弱火で2時間煮込む
- アクを丁寧に取りながら、澄んだスープを作る
- 最後の30分で秋刀魚節を加える
- ザルで濾して完成
自家製秋刀魚オイルの作り方
材料
- 新鮮な秋刀魚:2尾
- サラダ油:200ml
- にんにく:1片
- 生姜:1片
作り方
- 秋刀魚を三枚におろし、骨と頭を取り分ける
- 骨と頭を180℃の油で揚げる
- きつね色になったら取り出し、油を冷ます
- にんにくと生姜のスライスを加えて低温で香りを移す
おすすめアレンジ
- 味噌ラーメンベース:秋刀魚出汁に味噌を溶かし、コクのある一杯に
- つけ麺スタイル:濃厚な秋刀魚出汁をつけ汁にして
- 冷やし中華風:夏は冷たい秋刀魚出汁でさっぱりと

知って得する!さんまラーメン豆知識
なぜ秋刀魚とラーメンの相性が良いのか
- 旨味成分の相乗効果
- 秋刀魚のイノシン酸と昆布のグルタミン酸が合わさることで旨味が倍増
- 鶏ガラとの組み合わせでさらに深みのある味わいに
- 脂の活用
- 秋刀魚の良質な脂がスープにコクを与える
- DHAやEPAなどの健康成分も豊富
- 季節感の演出
- 秋の味覚を一年中楽しめる工夫
- 保存技術の発達により、旬の味を閉じ込めることが可能に
他のご当地ラーメンとの違い
- 味の統一をしない自由度:通常のご当地ラーメンは味やレシピが統一されているが、大船渡さんまラーメンは各店舗の個性を重視
- 食べ歩き前提の設計:複数店舗を回ることを楽しみとして設計
- 復興のシンボル:単なる観光資源ではなく、地域復興の象徴としての意味合い
まとめ
大船渡さんまラーメンは、単なるご当地グルメを超えた、地域の誇りと復興への思いが詰まった特別な一杯です。店舗ごとに異なる個性的な味わい、震災を乗り越えた力強さ、そして何より、三陸の海の恵みを存分に活かした美味しさが魅力です。
大船渡さんまラーメンは、食べる人に笑顔と元気を与える、まさに復興のシンボル。ぜひ一度、その深い味わいをご堪能ください。
この記事は2025年6月時点の情報に基づいています。営業時間や定休日は変更になる場合がありますので、訪問前に各店舗にご確認ください。